温浴施設「アジアンリゾート・スパ シーレ」などを運営するスパライフ・コミュニケーションズ(坂町)が新事業として昨年12月にオープンした和食店。高松部長は過去に大阪でフグとウナギの料理店で修行したほか、割烹(かっぽう)居酒屋のとり八グループ(中区流川)に18年間在籍した。
「築地から直送された天然マグロのほか、ハマチ、イクラ、サーモン、タイ、ネギトロなど多様なネタを楽しめる『海鮮バラチラシ丼』がダントツ人気。鮮度抜群の海の幸はもちろん、米は県内産にこだわるなど丹精込めて提供しています」
このほか、仕事帰りに居酒屋感覚で足を運んでもらおうとカキフライやタコの唐揚げなど一品料理に加え、ファミリー向けにハンバーグやとんかつ定食、お子様ランチなども用意する。
「飲食店10店舗のうち10年後に生き残るのはたった1店と言うほど、参入障壁は低いが存続させるのが難しいのが、この業界。地域から必要とされる店として長く切り盛りしていきたい」
不動産鑑定士と中小企業診断士の二つの資格を持ち、カープのペルドモさんのように二刀流で頑張っている。私の人生はカープそのもの。東京出身で親の影響は受けていないので、生まれる前からカープファンだと自称している。幼少期から周りが引くほどカープの素晴らしさを熱弁。東京でも電波を遮る高い建物が少なく広島のラジオ局を聴けたので、勝つと大喜び、負けるとラジオを壊して叱られたものだ。
資格取得でもカープの考えを生かした。勝つ方法は打つだけでなく四球や盗塁でもよく、勝利に徹した古葉監督の効率的な野球が好きだ。勉強に置き換え、苦手な暗記ではなく、効率性や重点の理解に集中して応用力を高め、合格を勝ち取った。
転機は2007年。前田智徳さんの2000本安打を観るために広島を訪ねると、街がカープにあふれ、ここに住みたいと思った。11年に念願の「カープ移住」を果たした。
中小企業診断協会では「カープを科学する研究会」に所属。資源の限られる中で知恵を使った独自の球団経営を科学的に解き明かし、その成果を中小企業経営の支援に役立てている。
今でもカープの監督になりたいと公言している。頭がおかしいと思われるが、東京で生まれてずっとカープファンで、移住してしまう時点でおかしい。部外者だからこそできる分析がある。もちろん二軍監督や戦術支援でもありがたい。オファーが来たら、カープの勝利に全てを捧げる覚悟でいる。
人から押しつけられると逃げ出す。自ら奮い立つと、何が何でも目的を遂げようと突っ走る。本能だろう。
システム開発の広島情報シンフォニー(東区)は作戦を変更して、社員のやる気を引き出した。若手が主導したDX推進プロジェクトをきっかけに、複数の自社プロダクトの商品化にこぎ着け、想定以上の、確かな手応えを得ているという。
当初は、社内DX化を目的にプロジェクトをスタートさせた。前年までは上長の指名制でチーム編成したせいか、取り組みの主体性などに課題を抱えていたが昨年から立候補制に変えた。あるいは一人も集まらないのではという懸念もあったが、社内告知したその日の内に20代の5人が名乗りを上げた。
チーム運営の仕方も彼らが決めた。本来業務の負荷を軽減するなど無理なく取り組める環境を整え、上司は極力遠く離れて自主的な行動を見守ることに徹した。何か問題点を見付けると、つい口をはさみたくなるが「任せておけ」と我慢したのだろう。
彼らと昨春発足した研究開発チームが一緒になり、データ分析やAI技術活用、新ビジネスアイデアの3チームでDXツールを開発・実証。これまでに工程・外注管理などのさまざまなデータを統合・分析する情報基盤のほか、育児休暇の取得手続きや出張時の手当の確認などの社内規定に関する質問に答えるAIチャットボット、社員の居場所や内線番号、その日の気分や一言コメントを共有する新たなサービスが生まれた。
今秋にかけ、社外へもDXツールの提供に乗り出す構えだ。岡崎昌史常務は、
「チームの一人一人が他部門にも積極的に出掛け、意見を聞いて回るなど、その頑張る姿にみんなが触発された効果が大きい。自分事として捉え自ら動く意識が広がったのだろう。志願し、データサイエンティストの勉強に取り組む社員も増えている」
データに隠されている情報を読み解き、経営の意志決定に必要な示唆、助言を行うデータサイエンスが注目されている。高度な分析能力、数学と統計、人工知能などを総動員する。これをこなした先が競争相手なら手強い。
言うまでもなく、DXは企業の成長戦略を支え、企業間競争に打ち勝つ重要な切り札になってきた。その一方で、大きな成果につなげているところと、限定的にとどまっているところを比較すると大きな差があるという。その差は何か。専門家は「人間力」という。そもそもDXの本質は業務効率化にとどまらず、企業文化や業務の流れも根本から変革することになる。
むろん技術的なスキルがないとどうしようもないが、本来の企業目的を達成するには経営トップの理解、リーダーシップに加え、変革を引っ張ることができる人材の養成、多様な立場の人の意思疎通を図り、問題解決へ向けたみんなのやる気が、何より不可欠という。何のために何をしようとしているのか。そこから踏み出すほか手はない。
とても人間くさい。その課題はいつの時代にもあっただろうが、いまは人間力とDXが手を組み、将来を切り開くチャンスなのだろう。
広島情報シンフォニーは 製造業向けDX支援などが貢献し、2025年3月期売上高は過去最高の20億円を突破。人間力とDXをつなげるコツを発見したプロジェクトの効果は小さくない。